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こんにちは、commonoデザイナー/翻訳者のうちむらです。

デザイン・シンキングの第2回目です。このテーマについては今回のシリーズを投稿した後も、何度も触れて行くことになりそうですので、なるべくシンプルにポイントをまとめていきますね。

前回はデザイン・シンキングの最初のステップとして、「理解」について考えました。大事なのは、ここで、理解をつきつめ、既知の情報を超える、ということ。そして何らかのブレイクスルーを見いだす、これがデザイン・シンキングに求められる、「イノベーションによる解決」につながっていく、という事でした。

では次のステップとなる、「発想」に進んで行きましょう。設定した目標のために何かすばらしいアイディアを出す、ということになるかと思いますが、単にひらめきやインスピレーションに頼っているだけでは、コンスタントに発明的なアイデアを出すということはできません。プロセスを定義・細分化し、実現可能な段階をいくつか踏む事でそれを行おう、というのがデザイン・シンキングのキモになる考え方のようです。

ですからまず、この「発想」を2つの段階に分けて行きましょう。そのふたつとは「問題の定義」と「観念化」です。

問題の定義とはなんでしょうか?一般にはこのように言われています。

「それは、どのようなニーズがあるのかといった事を選定するプロセスで、解決するニーズをクリアにするというのが目標だ。」

まだイメージが具体化しづらいと思います。では、次の文にあなたにとって適切な語句を当てはめて、考えてみて下さい。

「あなたは、2027年からやって来た、(ほんの少し)未来人です。2017年からの10年間、世界では色々なことがありました。良くない事もたくさんありましたが、進歩した点もたくさんありました。特に、2017年のあなたが関わる、○○の分野では、それまでなかった●●が出来たおかげで、2027年の世界はそのポイントにおいてはちょっと良くなっています。」

さて、あなたはこの空白に何を入れますか?○○の部分はあなたが今主に関わっていることですから、ここで悩む必要はあまりないかもしれません。車屋さんであれば自動車でしょうし、美容師さんであればヘアスタイリング、ということになるのだと思います。そして、●●の方を埋めるのが、デザイン・シンキングでいうところの「問題の定義」になる訳です。

前回とりあげたカフェオーナーの場合ですと、「それまでなかったカフェができたおかげで、2027年の世界はそのポイントにおいてはちょっと良くなっています。」ということになるのだと思いますが、では果たしてどんなカフェができたら、この世界は「ちょっと良くなる」のでしょうか?
まだイメージが漠然としていますから、ここでも細分化をしていきましょう。「問題定義」をさらに次の3つにわけていきます:

1. ターゲットユーザーはどんな人?
2. そのユーザーの抱えるニーズは?
3. そのニーズに基づく、思いがけない考察とは?

1. ターゲットユーザーはどんな人?
ターゲットユーザーはなるべく具体的にしていきましょう。「札幌市中央区を行動範囲にしている青年層」ぐらいでは不十分です。「20代〜30代の男性で、休みの日にはひとりで、あるいはパートナーと本屋や美術館に行くようなタイプ。内勤で働いているのでここに来るとしたら土曜か日曜」という人と、「30代後半から40代前半の女性、子どもが学校に通い始めたので週日の昼間に時間がある。英会話の教室が近くにあるのでこの前の通りをよく歩いている」という人では、同じ「札幌市中央区を行動範囲にしている青年層」ではありますが、どちらをターゲットにするかで店の作り方は全然違ってきます。今回は20代〜30代の男性の方にしぼって進んで行きましょう。

2. そのユーザーの抱えるニーズは?
週末に本屋や美術館に行くようなタイプの男性がカフェに対して持っているニーズはなんでしょうか?単純に、「札幌ではアート系のイベントが少ない」とうのがニーズとして存在するかもしれません。あるいは、大きな本屋で気に入った一冊を買うという時間がないかも知れませんね。そして、それを満たすソリューションを考える、という順番です。

3. そのニーズに基づく、思いがけない考察とは?
それを考える前に、上記のニーズを満たす「ありきたりな」方法をあげておきましょう。「美術に関する本を揃えたお洒落なカフェをつくる」というのがきっとありきたり代表の答えですよね。もちろんこれでもターゲティングはある程度出来ているのでまあまあ成功するような気もしますが、どうせならここでイノベーションを発揮したいものです。

もう一度いいますが、イノベーションを発揮するということはそれまでにない考えをひねり出すということですから、すぐに誰にでも浮かぶものではありません。しかし、それは偶然によってしか出て来ない、あるいは天才にしかできない芸当という訳でもありません。「適切な時間をかけ」、「適切に訓練された人物あるいはチームが行えば」人為的にイノベーションを起こす事は可能、というのがデザイン・シンキングの考え方なのです。

このフェーズで大事なのは、思いがけない考察に至る可能性が高い「視点の変化」の角度、というものがある、という事です。このような話をしてすぐにおもいつくのは恐らく「逆転の発想」というものでしょうが、「逆転」だけですと具体性にやや欠けます。この場合必要なのは、「そもそもこの前提はいるのかな」という、「原点に戻って逆転してみる」という視点の持ち方になります。

ここでターゲットユーザにもう一度戻ってみましょう。「20代〜30代の男性、本屋や美術館に行くようなタイプ」が、セブンイレブンやスタバでは得られないような体験をあなたのカフェに求めるとしたら、それは何でしょうか?もしかしたら、そんな人には海外生活の経験があって、アメリカ西海岸の大学の近くによくあるような、カフェ、本屋、ライブハウスの複合施設のような店を知っていて、札幌にもそんなところがないかな、と思っているかもしれません。あるいは、そもそもカフェである必要があるのでしょうか。美術・アートに興味があるのだとしたら、自分も元々はクリエイター志望で自分の作品を発表する場所を、あるいは制作ができるスペースを探しているかもしれません。あなたにそのような場所を提供できる可能性はあるでしょうか?

この「発想」における3つのフェーズを端的に実現したのが、Appleが2008年にMacbook Airを発表した時かもしれません。ターゲットユーザはおそらく「オフィスの外で仕事をする事が多い、アクティブなクリエイターやアーティスト、あるいはビジネスパーソン」という感じでしょう。世界で数百万台を売る予定のプロダクトですから、これくらいの限定具合がリミットかなと思います。

そのようなユーザの抱えるニーズは?「革新的に軽くて薄い、しかも性能を犠牲にしないラップトップが欲しい」ということでしょう。しかし省サイズのために出来る事は他社もやりつくしている。今までの方法では、まったく革新的な、業界の潮目を変えるようなプロダクトは出来ない。

そのニーズに基づく、思いがけない考察とは?「そもそもこれは必要か?」という考察にもとづいて、それまであって当然と思えるものをなくすことや、全く別のものに変えることを考えます。Macbook Airの開発において、Appleのチームはそのどちらも行いました。それまで不可欠とされてきた光学ドライブをなくして、そのスペースを薄型化にあてました。そうしなければ、DVDドライブよりも薄い本体を実現することはできなかったでしょう。また、HDDの面積をなくすため、当時はずっと高価で容量もすくないSDDを採用しました。これは当時としては大きな賭けだったと思いますが、省スペースに加え、圧倒的な速度の向上といううれしい副産物を生み出しました。

イノベーションとはまったく新しい価値感を生み出しているように見えて、多くの場合、今存在しているけれど過去の遺物になろうとしているものに「引導を渡す」という部分があるのかもしれません。光学ドライブがノートPCからなくなりかけていることや、自動車によって馬車がなくなったことなどがその例でしょう。そしてそれは、日常のささいな規模でも起こりうるものです。あなたのやろうとしているビジネスは、一体世界をどのように良くするのでしょうか。何に引導を渡すことになるのでしょうか。デザイン・シンキングの手法を取り入れる事で、それが可能になるのかもしれません。

次回は次のステップである “ideate” について考えます。日本語だと「観念化」になるでしょうか。よろしくお願いします。

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